エンタメビジネス実況中継

エンタメビジネス実況中継

朝日けけ。
Pays Japon
Langue JA
Épisodes 51
Dernier 18.09.2026

エンタメ業界で15年のキャリアを持つ朝日けけが、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPなどの新規事業の最前線で起きているビジネス動向を、毎回ひとつ取り上げて語る番組です。基本はひとり語りで、ときにはゲストを迎えながら30分にわたって掘り下げます。分析や解説ではなく、その時々の動きをそのまま伝える「実況中継」として届けられます。配信はSubstackで行われています。

Épisodes

  • 任天堂は11年前に「40年続くIP」の作り方を言っていた。ゼルダ40周年で見えたこと。 18.09.2026 23min
    「40年前のゼルダが、なぜいま、ここまで大きなニュースになるのか。」2026年9月8日と9日。任天堂が、初めて2日続けてNintendo Directを配信しました。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のSwitch 2版、実写映画、ゼルダ柄の本体、40周年コンサート、ニンテンドーミュージアム、スマホアプリ。ゼルダに触れる場所が、一気に並びました。ニュースとしては、ここまででお腹いっぱいです。でもわたしには、ひとつ引っかかった問いが残りました。40年前に生まれたゼルダが、なぜ2026年に、ここまで大きなニュースになるのか。なぜ新作が出るたびに、ファンの期待を越え続けられるのか。2日間を続けて見ると、これはお祝いではないとわかります。9月8日は、ゼルダという一つのIPを縦に深く掘る日。9月9日は、遊び場のほうを横に広げる日。新作もリメイクも昔のゲームも、同じ番組に並ぶ。縦と横が交わるところに、いまの任天堂の商売があります。しかも任天堂は11年前、2015年の決算説明会でこの考え方をすでに口にしていて、2025年には一枚の図にもしていました。今回はニンダイの中身を追いながら、10年以上かけて組み立てられた「40年続くIP」の作り方を、5つの示唆に整理しました。▼話したこと・2日間のニンダイで並んだもの。ゲーム、映画、ハード、スマホ、音楽、施設、グッズ・9月8日は「縦」、9月9日は「横」。2日間が一つの発表だった理由・周年を「祝う日」ではなく「再入場口を増やす日」として設計するという考え方・岩田聡さんが2015年の決算説明会で語っていた、IPの価値の積み上げ方・『時のオカリナ』を選んだ理由。旧作は記録ではなく未来の商品候補になる・実写映画で制作費の50%以上を出資。世界という市場のプロデューサーに回った・40年続くブランドは、守るものを減らして、戻れる場所だけを残している▼note記事【ニンダイ2026まとめ】ゼルダ40周年で見えた、任天堂の「40年続くIP」の作り方https://note.com/keke_ent/n/n79be75e214a8▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 『オデュッセイア』が10倍面白くなる。「掟」で全部つながる10問10答 | 解説・考察 14.09.2026 19min
    「なぜ、見ず知らずの旅人をあそこまでもてなすのか。」クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』を、9月10日のアイマックス先行で観てきました。上映時間は172分。観終わって2日たっても、頭のなかは映画のことでいっぱいのままです。引っかかった場面が、いくつも残っていました。冒頭でポリュペモスが父に告げ口する、あの父は誰なのか。なぜ見ず知らずの旅人を、あんなに手厚くもてなすのか。なぜ死者を弔わないことが、あそこまで責められるのか。アテナが味方なのに、なぜほかの神には苦しめられるのか。観終わってから原作と神話の資料を読み直したら、引っかかりのほとんどが、たったひとつの前提で説明がつきました。神々は人間と同じ世界に住んでいて、直接口を出してくる。そして、その世界には人間が守るべきルールがある。今回は、その前提を10個にまとめました。はじめの3つで神々とルールの話を、残りの7つで、そのルールが場面にどう出てくるかを見ていきます。観る前でも観たあとでも、登場人物の判断が違って見えてくるはずです。▼話したこと・クセニア。迎える側と客が互いに守る、ゼウスが見張っている約束・神々は旅人の姿に化けて人を見て回るから、確かめる前にもてなす・葬られない死者は死者の国の門をくぐれない。遺体を置いていく重さ・兄弟が姉妹と結婚している。ニョンゴが姉妹を一人で演じる理由の推測・アガメムノンが自分の娘イピゲネイアを生贄にした、恨みの前史・映画のカリュプソはハスの花で7年。原作では別だった二つの重なり・求婚者が責められるのは、客の側からクセニアを破っているから▼note記事『オデュッセイア』が10倍面白くなる。「掟」で全部つながる10問10答https://note.com/keke_ent/n/n82ea6a4d5040▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 『オデュッセイア』の吟遊詩人をトラヴィス・スコットにした理由。クリストファー・ノーランが2,700年前の話を現代につないだやり方とは |  感想 12.09.2026 11min
    「勝った英雄が帰れない。その旅に、なぜ心が動くのか。」9月10日、先行上映のIMAXで『オデュッセイア』を観てきました。すごくよかった。でも、観ているあいだは何度も絶望しました。まだ序盤なのに仲間が次々と倒れ、こんな相手にどうやって勝つのかと途方に暮れる。そんな苦しい旅の最後に、心からうれしくなったんです。わたしも仕事で人を率いてきました。自分の判断についてきてくれた人に苦労をかけることもある。結果が出ても、その人が苦しんだ時間までなくなるわけではありません。その実感が、英雄オデュッセウスが死者と向き合う冥界の場面に重なりました。木馬の作戦を考え、戦争に勝ったオデュッセウス。その勝利にも、命を落とした人の人生があります。自分の知恵で人を動かした男が、帰還にあたっては人の忠告を守る。もう帰れない人たちの言葉が、生きている家族を守る行動につながっていました。今回は巨人兵の絶望、冥界での対話、慎重な帰還をたどり、ラストがうれしかった理由を話します。さらに、トラヴィス・スコットが物語を歌う場面から、約2700年前の叙事詩が今の映画館まで届く面白さへ。物語の展開と結末に触れるので、鑑賞後にどうぞ。▼話したこと・巨人兵の場面に感じた、『進撃の巨人』にも似た圧倒的な絶望・木馬の作戦の犠牲者シノンと向き合い、勝利を見直す冥界の対話・アガメムノンの忠告を受け、身分を隠して家族を守る帰還・トラヴィス・スコットの歌と、物語を語り継ぐ人たちのつながり・約2700年前の叙事詩が今の感情を動かす、IPとしての面白さ▼note記事人を導く者は、誰に導かれるのか。『オデュッセイア』感想https://note.com/keke_ent/n/nbc6d76c3168f▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 『スプラトゥーン』は、なぜイカにたどり着いたのか。その軌跡から見えた「コンセプトのつくり方」。 11.09.2026 9min
    「豆腐で面白かったゲームに、なぜイカが必要だったのか?」白い豆腐と黒いゴマ豆腐が、鼻からインクを出して陣地を奪い合う。『スプラトゥーン』の始まりは、そんな試作でした。そこからヒト型、ウサギを経て、ようやくイカにたどり着く。Xに投稿して反響があったこの開発秘話を、もう少し追いかけてみました。わたしが面白いと思ったのは、イカというモチーフが見つかるまでの考え方です。試作の時点で、遊びには手応えがあった。それでも、キャラクターの姿を変えると、面白さを支えていた条件が崩れてしまう。この行き来に、コンセプトをつくる仕事の大事な部分が見えます。インクを塗ると隠れられ、相手の位置を読む遊びが生まれる。ところがヒト型では姿が見え、壁を塗っても勝敗にはつながらない。ウサギには見やすさの利点があるものの、なぜインクを撃つのかは説明しにくい。それぞれの案が持つ長所だけでは、条件は揃わなかったんです。隠れる、移動する、撃つ。その役割を整理し、イカとヒトの二つの姿に分けると、遊びと見た目がつながり始めます。任天堂の開発インタビューをもとに、豆腐からイカへの道のりをたどりながら、面白さを分解し、もう一度つなぎ直すコンセプトづくりを考えます。▼話したこと・半年ほどで出した70個の案から、豆腐の対戦ゲームが残った理由・塗る、隠れる、相手の位置を読む動作が、試作の面白さを支えていた・ヒト型やウサギに変えるたび、見た目の利点と遊びの問題が生まれた・隠れる・移動する・撃つ役割を整理すると、イカを選ぶ理由がつながる・イカとヒトへの変身が、壁を塗る意味や潜るときの演出まで結びつけた▼note記事『スプラトゥーン』は、なぜイカにたどり着いたのか。その軌跡から見えた「コンセプトのつくり方」。https://note.com/keke_ent/n/nea387d1c33bc▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • holo Indie、Roblox、Fortniteから見る「二次創作によって拡張されるIP」の躍進。 09.09.2026 15min
    「ファンがつくったゲームは、どれだけ遊ばれたのか?」好きなキャラの絵を描く。切り抜き動画をつくる。作品の設定を使って、自分でもゲームをつくってみる。ヒットしたエンタメの周りには、二次創作で遊ぶ人がいます。2026年6月時点で、holo Indieの作品は40タイトル超、累計300万ダウンロードを超えました。ヒットの大きさを語るとき、わたしたちは興行収入や発行部数、再生数を見ます。でも、ファンが何をつくり、それがどれほど遊ばれたかは、見落としがちでした。今回は、公式作品の周りで育っている創作を、各社が公開する数字から考えてみました。カバーは二次創作ゲームの販売を支え、Robloxはクリエイターへの還元に関わる費用を決算で公開しています。Fortniteも、プレイヤーがつくったゲームの利用時間を公表する。一方で、応募を審査する人の数や、収益の大きな偏りという課題もあります。どこまでつくってよいかを示すガイドライン。公式の支援を受けて販売できる仕組み。そして、創作を続ける人に戻るお金。ホロライブ、Roblox、Fortniteに、初音ミクの事例も交えながら、二次創作によって広がるIPの現状をたどります。▼話したこと・holo Indieの40タイトル超と300万ダウンロードが示す広がり・個人開発の『ホロパレード』が公式の支援を受けて販売される仕組み・Robloxの決算に載る、クリエイターへの還元に関わる費用・初音ミクとホロライブが、ファンにつくってよい範囲を示す方法・応募の審査と収益格差から考える、創作を続けられる人の数・Fortniteの2024年の利用時間の36.5%を占めたプレイヤー作品▼note記事holo Indie、Roblox、Fortniteから見る「二次創作によって拡張されるIP」の躍進。https://note.com/keke_ent/n/n6de556c1edd5▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • マンガのアプリは消えるが、作る編集部は残る。 06.09.2026 20min
    「金額は増えているのに、読む場所は減っています。」2026年の夏、電子コミック市場が伸びたという発表のすぐ後に、まんが王国の業績予想下方修正と、13年続いたcomicoの終了が伝えられました。市場規模は大きくなっているのに、読者が集まるはずのアプリは減っていく。逆向きに見える出来事が、ほぼ同じ時期に起きています。わたしも最初は、電子マンガが縮みはじめたのだろうと考えました。しかし、2026年上半期の電子コミック市場は2,593億円で前年同期比2.5%増。数字だけを見れば、その読みは外れています。そこで売上の中身と、各社が残そうとしている機能を分けて見直しました。見えてきたのは、市場を押し上げる割引やポイント還元の一方で、課金する読者が減っている構造です。LINEマンガの課金ユーザーは4月から6月の3か月で9.5%減少。作品を作る力と、読者を自社アプリへ集める力を、ひとつの会社で抱える前提が崩れつつあります。今回は、comico、日本文芸社、taskeyの動きを手がかりに、マンガを作る会社と届ける会社が分かれはじめた背景を整理しました。自社アプリを畳んでも編集・制作は残る理由と、売上以外にあるアプリの役割まで、数字と具体例からたどります。▼話したこと・電子コミック2,593億円の成長を支えた割引・ポイント・無料施策・まんが王国の利益半減とcomico終了が示す読者数の変化・雑誌が一体で担っていた作品制作・販売・新作発見の三機能・終了したアプリで購入作品と読書権が別サービスへ移る仕組み・LINEマンガの課金額と課金ユーザー9.5%減が映す市場の実像・comicoが売り場を畳みながら編集・制作機能を残す理由・taskeyが自社アプリの読者データを作品づくりへ戻す循環▼note記事マンガアプリは消えるが、作る編集部は残る。https://note.com/keke_ent/n/ndecbdf45c45f▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • HANAを追いかけたら「歌姫」が消えた理由に気づいた。 05.09.2026 17min
    「歌姫は、どこへ行ってしまったのでしょうか。」HANAを追いかけていると、どうしても気になってしまうことがあります。歌がうまくて、女性からの支持も厚くて、曲もファッションも話題になる。もしいまが2000年前後だったら、きっとすぐに「歌姫」と呼ばれていたはずなのに、いま、その言葉をかける人がいません。そういえば「歌姫」という響き自体、ここ数年ほとんど耳にしていない。Billboard JAPANの2025年年間アーティストチャートでは、HANAが5位、YOASOBIが9位、ちゃんみなが10位、あいみょんが11位、Adoが19位。女性がボーカルの名前が上位に並んでいるのに、誰もその言葉を使わないのです。歌姫に必要だったのは、歌のうまさだけではありませんでした。倖田來未さんの「エロカッコイイ」が流行語大賞で受賞したとき、受賞者の欄にあったのは言葉ではなく本人の名前。西野カナさんは同世代の気持ちを集めて代表して歌いました。その年の女性像を、丸ごと一人で背負える人のことだったのです。HANAの実績は、すでに歌姫クラスに届いています。それでもそう呼ばれないのは、HANAの側ではなく、迎えるわたしたちが変わったからでした。今回は、歌姫という言葉が何を指していたのか、そしてなぜその条件がもう立ち上がらないのかを整理しました。▼話したこと・宇多田ヒカル700万枚、浜崎あゆみと初日161万枚対決。2000年前後の歌姫の桁・歌姫の条件は歌のうまさではなく「その年の女性像を預かれる範囲」の広さ・HANAの実績——「ROSE」4億回再生、紅白初出場、2026年は17都市25公演・紅白53.9%→35.2%、non・no実売は5年で4割減。全国一斉に見せる力の縮小・『No No Girls』が身長・体重・年齢を聞かなかったことの意味・「あの人になりたい」から「この人の、この部分が好き」へ変わった憧れ方・HANAは次の歌姫ではなく、歌姫がいなくていい時代の最大のスター▼note記事HANAを追いかけたら「歌姫」が消えた理由に気づいた。https://note.com/keke_ent/n/n59a1220af171▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 「SPEED」は青春そのもの。 29.08.2026 16min
    「こんな子たち、見たことがない。なのに、学校にいた気がする。」ラブ上等2を見ながらNewJeansの記事を書き終えたあと、頭の中に戻ってきたのはSPEEDの思い出でした。1996年、日本テレビの『THE夜もヒッパレ』で、まだSPEEDという名前すらなかった4人を見ていたときの記憶です。エンタメ業界15年、複数事業を統括してきた立場から、人が売れていく過程はいくつも見てきました。それでも、あの4人がスターになっていく順番を目撃したときの驚きだけは、いまも説明しきれずにいます。公式サイトによれば、4人が番組で本格的に活動を始めたのは1995年10月、「SPEED」という名前がついたのは1996年1月13日でした。名前も自分たちの曲もない状態から見ていたからこそ近く感じられ、そして同じ順番は二度と再現できませんでした。今回は、SPEEDの1335日を最年少メンバーの学年に重ねて数え直し、NewJeansとのあいだにある同じ矛盾まで整理しました。なぜ「第2のSPEED」が出てこなかったのかも話しています。▼話したこと・『THE夜もヒッパレ』で見た、まだSPEEDという名前すらなかった4人・年間シングルTOP100の21.3%を小室ファミリーが占めた1996年の遠さ・12歳・12歳・13歳・15歳でデビュー。近いのに曲が始まると手が届かない・「STEADY」100万枚、『Starting Over』ダブル・ミリオンという楽曲の強さ・1335日は、最年少・島袋寛子さんの小6の夏から中学卒業の春までと重なる・もう一度つくれなかったのは4人ではなく、何も知らずに見ていた側の目のほう・NewJeansと共有する矛盾。見たことがないのに、学校にいた気がする▼note記事ぼくらの世代は「SPEED」が青春そのものだった。https://note.com/keke_ent/n/n9b4adf2d174b▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 13年待った。『まどか☆マギカ』新作公開までの順番が美しい。 29.08.2026 12min
    「13年待った続編の始まり方が、美しい。」昨日2026年8月28日、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が公開されました。13年前の『新編 叛逆の物語』の正統な続編で、シリーズ初のIMAX同時公開です。わたしは2011年のテレビ放送時、前情報をいっさい持たずに観始め、途中の展開にまともに殴られました。それ以来の特別な作品です。新作はまだ観ていませんが、公開までの順番だけで、すでに作品らしさを感じました。公開2週間前から『叛逆の物語』を新作と同じ287館で再上映し、終了後に新作の冒頭約5分を連続上映。過去を思い出した直後に新しい断片を渡すこの設計は、次回を1週間待つ時間まで作品体験にしたテレビシリーズと重なります。今回は、20億円を超えた『叛逆の物語』から13年、制作発表から5年4か月という時間をたどります。主要スタッフの再集結、新しい2人の魔法少女、リバイバル上映から新作へつないだ三段階の公開順を、わたし自身の記憶と一緒に話しました。▼話したこと・2011年、前情報ゼロの完全オリジナルアニメだから味わえた衝撃・文化庁大賞の評価と20億円超えが示した、魔法少女ものの逆転・主要スタッフとキャストが13年後に再集結し、梶浦由記も音楽へ復帰・『叛逆の物語』が残した、ほむらの愛と執着が分かれない問い・紫丁香とセルマ・テレーゼ。2人の新魔法少女が背負う願い・192館のリバイバル、287館の『叛逆』と5分、IMAX新作へつなぐ三段階・1週間という13年。待つ時間そのものを作品体験に変えた公開設計▼note記事13年待った。『まどか☆マギカ』新作公開までの順番が美しい。https://note.com/keke_ent/n/n863f08474c33▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 『オークストリートの異変』は、なぜ見慣れた物語なのに新しく見えるのか|感想・考察 24.08.2026 16min
    「見慣れた恐竜映画が、なぜ新しく見えたのか。」恐竜が脱走し、普通の家族が襲われる。予告だけを見れば、『オークストリートの異変』はジュラシック・シリーズ以降に何度も見てきた物語に思えました。それなのに映画を観終えると、まったく新しいものを見た感覚が残ったんです。わたしが気になったのは、恐竜や時間移動という題材そのものではありません。『ブラッシュアップライフ』の転生にも感じたように、新しさは「どこから何を借りて、どこに混ぜるか」という距離から生まれるのではないか、ということでした。本作が動かすのは主人公ひとりではなく、家や庭、道路、隣人関係まで含む住宅街の日常です。能力を与える代わりに文明を奪い、恐竜を悪役にする代わりに人間を侵入者へ変える。その反転が、見慣れた材料の意味を次々にずらしていきます。今回は、1982年の郊外映画の文法、デニースによる人生の書き直し、そして幸福なラストの外側に残るかもしれない別の一家までをたどりながら、『オークストリートの異変』が新しく見える理由を考えました。▼話したこと・『ブラッシュアップライフ』との比較で考える、題材よりも借りる距離が新しさを生む構造・主人公ではなく家・庭・道路・隣人関係まで含む住宅街の日常を丸ごと動かす反転・電気・水道・通信を失うほど、断絶していたプラット家の信頼だけが戻っていく理由・恐竜を怪物ではなく生きた動物として描き、人間のほうを侵入者に変えた視点・『E.T.』や『ポルターガイスト』の1982年型郊外映画を現代から書き直す方法・夫を失った記憶と一本のピザ注文で、デニースが現実の結末を選び直すまで・幸福な帰還の外側に、太古へ取り残された別のプラット家がいるかもしれない仮説▼note記事『オークストリートの異変』は、なぜ見慣れた物語なのに新しく見えるのか|感想・考察https://note.com/keke_ent/n/ncae085587aea▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • K-POPはもう、NewJeans以前に戻れない。 24.08.2026 21min
    「本人はいないのに、世界のほうがNewJeansになった。」2026年7月22日、NewJeansのデビュー4周年に、約1年4か月ぶりの公式コンテンツが公開されました。公園、ローラースケート、アイスクリーム。そこに映っていたのは5人ではなく4人で、新曲もアルバムも活動予定も発表されていません。それでも「再始動」という言葉が動き始めました。わたしはNewJeansが好きで、今でもほぼ毎日聴いています。先日、Xの投稿のため実績を並べ直して、忘れていた異常さに気づきました。この2年、契約トラブルや裁判の話が先に届き、6曲でSpotify累計10億回、東京ドーム2日間で91,200人という短期間の実績が、ニュースの奥へ隠れていたんです。NewJeans以前のK-POPは、強いサビ、高度なダンス、派手な映像を足して「圧倒する」ことで世界を獲りました。その頂点でNewJeansは、曲、映像、服、踊り、公開順まで一貫して引いた。すると「引いても勝てる」が業界の共通言語になり、本人たちが活動を止めたあとも、その感覚だけが標準として広がり続けました。今回は、デビューから最後の新曲までの1年11か月、16曲すべて1億回超・合計73億回という数字を手がかりに、NewJeansが変えたK-POPの勝ち方を整理します。SPEEDとの共通点から「スターになる途中の時間」の切なさもたどり、彼女たちが置いていったものと、置いていかれたものを考察します。▼話したこと・BLACKPINKやaespaに象徴される、「圧倒する」ための足し算・曲・映像・服・踊り・公開順まで、NewJeansが一貫して引いた設計・219日・6曲でSpotify累計10億回。引き算が偶然ではないと示した数字・企画書に残らない「外したもの」を守ることが、大規模企画ほど難しい理由・NewJeansとSPEEDが作品に残した、「スターになる途中」の期限・NewJeans的な軽さがK-POPの共通言語になり、新しい足し算へ変わった皮肉・活動1年11か月、停止2年2か月。それでも16曲73億回が動き続けた意味▼note記事K-POPはもう、NewJeans以前に戻れない。https://note.com/keke_ent/n/nc8e8f8d3a9fb▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • 物語を持たないIPが、いま映画をつくる理由。 22.08.2026 15min
    「みなさんご存知の通り、ハローキティに、口はありません。」サンリオの公式プロフィールには、ハローキティの本名も、誕生日も、家族構成も、ボーイフレンドの名前まで書いてあります。将来の夢は、ピアニストか詩人。設定はここまで細かいのに、キティが挫折する話も、笑われる話も、どこにも存在しません。エンタメ業界で15年、IPの仕事をしてきて、この「設定はあるのに物語がない」キャラクターたちのことが、ずっと気になっていました。バービーも、ヒーマンも、出自は同じです。物語を持たないまま、何十年も愛されてきました。人形やぬいぐるみのいちばん豊かな体験は、物語がないことです。子どもが自分で物語を注ぎ込めるから。ただ、その物語はその子の中にしか残りません。隣の子とも共有されないし、大人になった本人が自分の子どもに手渡すこともできない。空白は、次の世代へ引き継げないんです。2028年公開予定のハローキティ映画、2026年の実写『マスターズ・オブ・ユニバース』、2023年の『バービー』。この3本を並べて、物語を持たないIPがなぜいま映画をつくるのかを整理しました。答えは「回収」だと思っています。▼話したこと・ハローキティの公式プロフィールは細かいのに、物語だけが存在しない理由・人形やぬいぐるみの最大の体験は「物語がないこと」だという逆説・子どもがつくった物語は外に出ない。空白は次の世代へ引き継げない・マテルが1983年にヒーマンのアニメで解いた、玩具原作の最初の答え・実写ヒーマンのオープニング週末、45歳以上が36%で12歳未満は4%・バービーは64年ぶんの余白を回収しながら、余白の価値を物語で返した・劇場は製作費割れでも玩具の出荷は年初来3倍。回収は劇場では測れない▼note記事物語を持たないIPが、いま映画をつくる理由。https://note.com/keke_ent/n/nc33341a9bd4d▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • IPは最初からIPじゃない。 21.08.2026 18min
    ガンダム、キティ、アンパンマン、マリオ。これらの名前を聞くと、ほとんどの日本人は知らないことはないでしょう。一方で今や日本を代表する IP となったこの4つの作品も、実は最初から人気だったり、大きく利益を出していたり、順風満帆な道を通ってきたわけではないんですよね。半世紀経った今となっては、莫大な売上と利益をもたらすこれらの「IP」と呼ばれる作品、およびその権利ですが、世の中に出た最初の時に、ここまで大きくなると見抜いた方も存在しないのではないでしょうか。本記事ではそんなエンタメビジネス界隈でIP、アイピーと叫ばれる時代において。現在、日本を代表する IP たちも、生まれた時は IP には見えてないよねという「ジレンマ」について解説していきます。まずは『機動戦士ガンダム』。だれもが知っていますよね。いまでは世界的なIPとなった作品ですが、最初のテレビアニメは当初52話までの予定だったのに、全43話で終了しています。公式資料では、低視聴率と当時の関連商品の不振を背景に、予定より短い話数で放送終了になったんですよね。それでも、最初のガンプラが発売されたのは1980年7月で放送終了から半年のことでした。ちなみにアニメ放送中に発売されていた商品と、この初代ガンプラはまったくの別のものです。次にみんな大好き『ハローキティ』の最初商品であるプチパースは人気商品でした。それでも、3代目のデザイナーであるサンリオの山口裕子さんが担当になる1980年ごろには、キキ&ララのほうが人気だったそうです。つまり谷だったんですよね。そこから服やポーズ、物語を増やし、1984年には友だちのタイニーチャムが登場。それがきっかけで、1985年にキティはサンリオのトップセールスに返り咲きました。『アンパンマン』の最初は、1969年に現れ、はじめは大人向けのメルヘンな作品として展開されたが、1973年に幼児向けの絵本になりました。現在まで続くテレビシリーズが始まったのは1988年です。原型から19年経って絵本に、そして絵本から15年が経ってアニメになっている。1981年の『ドンキーコング』は、成功したゲームでした。ただ、プレイヤーが動かす主人公は、まだ「ジャンプマン」「ミスター・ビデオ」などと呼ばれていました。その人物がマリオという名前を持ち、1983年には『マリオブラザーズ』、1985年には『スーパーマリオブラザーズ』の主人公になります。IPの定義本題に入る前にまず、IPの定義について簡単にまとめましょう。直訳すると知的財産の意味で、主にアニメ、漫画、ゲームのキャラクター、音楽など、作品そのものや権利を指します。ただ、これだとどんな作品も IP になりますよね。イラストを1枚描いたらIPなのか漫画の読み切りを描いたらIPになるのか漫画の連載が始まったらIPになるのか私は違うと思います。それらはまだIPではなくて、作品です。なぜなら私はIPの定義を、「時間に耐え、感情を動かすもの」だと考えるからです。※詳細は記事にまとめていますので、併せてどうぞ。エンタメ業界・エンタメビジネスにおける「IP」とは何か?この定義では、生まれた時点ではまだIPではありません。テレビアニメであり、キャラクターイラストであり、漫画であり、ゲームあり、キャラクターたちです。こう考えると、人が最初につくれるのは、作品までです。それがどれだけ時間に耐えられるかは、生まれた日に決められません。やめる理由ならいくらでもある話を戻しましょう。冒頭でご紹介した4つの国民的な IPも、最初からずっと大成功だというわけではなく、ガンダムは、テレビ放送の初期不振。キティは、最初の商品が売れたあとの低迷。アンパンマンは、主なターゲットと届け方の変更。マリオは、成功したゲームの無名のキャラから、名を持つメインキャラへ移った例です。道のりは、ぜんぶ違います。ただし4つに共通するのは、最初の結果や一度の不調だけでは、その作品の可能性を測れないということです。もちろん、新しい作品の視聴率・読者数・閲覧数・売上といったわかりやすい指標を見て、次の予算を決めることは、とても合理的です。企業なら絶対にそうするでしょう。人もお金も有限ですからね。会社は利益を求める。数字を無視して、すべての作品を継続することはできません。ただ、4つの事例を見て思うのは、作品の黎明期において足元の数字が悪いからといって、「その媒体の後続を止める判断」と「作品そのものを終了にする判断」は、まったく別だということです。なぜなら、いま足元で出ている数字は、その作品を「どの範囲まで」評価できているのかを、まだ測りきれていないかもしれないからです。初回のアニメ実績で判断していたら、2500億の IP は存在していないガンダムがその答えを教えてくれています。初代ガンダムのテレビ放送は、1979年4月から1980年1月まででした。最初のガンプラが発売されたのは、その半年後です。当時の視聴率と商品の売れ行きが測ったのは、それぞれテレビ放送と、その時点で売られていた商品への反応です。もちろん、それらは後の商品需要を予測する材料にはなります。ただ、放送終了後に店頭へ並ぶガンプラへの反応を直接測った数字ではありません。商品そのものが、まだ売られていなかったからです。初代ガンダムは、放送中に見えた数字だけでは、まだ売られていないガンプラへの反応まで測れません。そこまでを同じ物差しで評価しようとすると、どうしても範囲が広くなりすぎてしまいます。とはいえ、これは当時の終了判断が間違いだった、と責める話ではありません。その時点で見える数字と商品の状況から、限られた予算を配り直す。運営する側としては、きわめて合理的な判断です。大事なのは、テレビ放送への判断を、そのまま作品の「終わり」と同一視しないことです。そうしなければ、放送とは別の場所で、あらためて反応を確かめる余地を残せます。要するに、最初の1回やってダメだったからといって終了判断せず、諦めずに次の一手を打つ、ということですね。続けるとは、次の届け方を試すこと「続ける」と聞くと、同じ作品を同じ場所へ置き続ける姿を想像しがちです。でも、四つの公開年表に並んでいるのは、むしろ変化です。ガンダムには、再放送とプラモデルという別の接点ができました。キティは、服を着て、ポーズを持ち、物語と友だちが増えていきました。タイニーチャムは、その試行の一つです。タイニーチャムだけが人気を戻した、とまでは言えません。アンパンマンは、大人向けのメルヘンから幼児向けの絵本へ移り、さらに現在まで続くテレビシリーズになりました。1973年の絵本から、1988年に始まった現在のテレビシリーズまでが15年です。マリオはゲームから別の媒体へ移ったわけではありません。一つの成功作の主人公が名前を持ち、自分の名を冠した作品の中心へ移りました。変わったのは、呼び方と役割と、作品の設計です。だから、続けることを「時間だけを延ばすこと」「同じことを続ける」だとは考えません。受け手のなかに残った反応を見つけ、その反応を頼りに別の商品、別の受け手、別の役割でもう一度試す。続けるとは、次に出会う場所をつくることです。終了を決める前にでは、いま数字が弱い作品をどう見るか、考えればいいのかそれは、三つの順番で見るようにしています。一つ目は、その数字が何を測ったのかです。動画の再生数なら、その尺、その配信面、その時期に再生された回数です。商品の売上なら、その商品、その価格、その売り場で成立した金額です。どちらも大切な数字ですが、作品のあらゆる届け方をまとめて測った数字ではないんですよね。その作品のポテンシャルは、本当に測りきれているでしょうか。最初に選択したメディアの数字だけを信じて、それだけを見ていると、視野が狭くなってしまうことがたくさんあります。例えば、ちいかわはコロナ禍の X(旧Twitter)で一気に認知を広げて話題になりましたが、その本来の破壊力を測るのは、やっぱり店頭に並んだときのグッズの可愛さです。「つい買ってしまう」ぬいぐるみの破壊力です。それらを身の回りに置いたときの「体験」のほうだと思うんですよね。だからこそ、キャラクタービジネスにおいては、仮に SNS の投稿で多少反応が悪くても、「グッズが展開できたかどうか」「売れるかどうか」を見ることが大事になるのです。二つ目は、その数字の外に、具体的な反応が残っているかです。キャラ名が覚えられている。あるシーンが何度も語られる。二次創作が起きている。たとえ数は多くなくても、こうしたファンや読者、視聴者の「別の形でもう一度楽しみたい」「もっと作品に触れたい」という気持ちが残っているかどうか。次に試す材料になるのは、こうした人物、場面、欲求への反応です。そうした小さな声は、今のネット時代なら、きっとどこかにシグナルとして現れているはずです。三つ目は、その反応を試す次の届け方と、実際に動かせる人、予算、流通があるかです。この三つの確認は、成功を保証する条件ではありませんが、わたしは、この三つを確認できたとき、初出の数字と最終判断を分けて考えるようにしています。わずかなシグナルだったり、やり残したこと、そしてそれを動かす人や予算があれば、諦めずに次の「一手」を打つでしょう。一方で、反応がない。次の届け方の仮説もない。動かす人も、予算も、流通もない。その状態で時間だけ延ばしても、作品にとってプラスにならないことが多い。そう判断したときは、その作品を区切り、クリエイターと一緒に次の打席に立つほうが良い、と決める場合もあります。次の一手は、成功を保証しない本記事で挙げた4つの例は、いずれも現在まで残った作品たちです。続けられたから大きくなったのか、最初から人気だったから続けられたのか。これは、いわば鶏卵の問いです。失敗した作品を含む分母がない以上、4つの事例だけから「届け方を変えれば成功する」「何年続ければIPになる」とは言えません。ガンプラ、タイニーチャム、アンパンマンのテレビシリーズ、マリオという冠作品のどれか一つだけを、成功の原因だと断定することもできません。公開資料から確認できるのは、最初の形とは別の一手が後から出され、展開が続いたという「順番」までです。わかることは、ひとつだけです。次の一手は、突破を保証しません。でも、次の一手を置かずに運営を終えれば、その運営から突破が生まれる可能性も、そこで終わります。人が最初につくれるのは作品まで作品をつくる側が、未来のヒットを予測することまでできません。できるのは、作品の可能性を信じ、足元の数字が、なにをを測ったのかを見極めること。消費者の反応を見つけること。小さなシグナルをしっかり受け止めること。そして、別の形で次に届ける一手を生み出すことです。人が最初につくれるのは、作品までです。その作品が時間に耐え、もう一度誰かの感情を動かしたとき、あとからIPと呼ばれるものになる。まだIPではない作品に、次に出会う場所をつくる。わたしは、それが作品を運営する人の仕事だと思います。それでは。朝日けけ。高評価をいただきますと、創作のモチベーションになります。いつも読んでくださってありがとうございます。このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • ジャンプ100万部割れ。部数が映したのは読者数より漫画が置かれる場所。 20.08.2026 23min
    ▼話したこと・印刷証明付部数は「刷った数」であって売れた数ではない。実売も返本率も非公表・73期を並べて見えた崩れ方。最高296万部から66.8%減、ただし右下がりの一本道ではない・2018年10-12月期以降、100万部超えはジャンプ1誌だけ。消えたのは枠そのもの・紙は週98万5,000部、ジャンプ+は週480万人。ただしアプリは3年間ほぼ横ばい・答えは日販の決算にあった。391億円の減収、その約6割はコンビニ取引の終了・取引が続いた書店の店頭売上は1.7%減。棚が減れば読者が減らなくても刷る数は減る・反証も並べる。撤退は赤字の結果でもあり、2026年上半期は3.8%減まで戻った▼note記事ジャンプ100万部割れ。部数が映したのは読者数より漫画が置かれる場所。https://note.com/keke_ent/n/n30201378ada5▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • TikTokのバズは、アーティストの器のサイズまでしか伸びない。 18.08.2026 28min
    ▼話したこと・「バズってから売れた」は半分だけ正しい——M!LKは横浜アリーナ1万2,000人がバズの1年4ヶ月前にあった・火から初ステージまで2ヶ月〜31ヶ月、速さと会場の大きさはきれいに対応しない5組の比較・tuki.は31ヶ月かけて階段を全部飛ばし、初公演の日本武道館で8,503枚のギネス記録・M!LKの10年3ヶ月とME:Iのデビュー前6万5,000人——大きい数字は火がつく前の日についていた・SNS45億回の楽音、まだライブ未発表——火と場所の距離が今いちばん開いて見える存在・火をつける値段は3年で誰にでも開いたが、会場はKアリーナ横浜など3年で3つしか増えない・これから強いのはバズらせる人ではなく、バズを一度で受け止める場所を先に用意している人▼note記事TikTokのバズは、アーティストの器のサイズまでしか伸びない。https://note.com/keke_ent/n/na6a0f72ed296▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。 17.08.2026 17min
    「地下鉄で見知らぬ人の持論を聞くだけの番組が、40億再生の人気番組を退けてエミー賞に届いた」ニューヨークの地下鉄のホームで、通りすがりの人にメトロカードそっくりのマイクを向ける。「あなたの持論を聞かせてください」とお願いして、司会がその場で賛成したり反対したりする。台本なし、演出なし、編集は最小限。それだけの番組『Subway Takes』が、累計7.5億再生、ブランドタイアップ1件あたり約3,000万円、そして2026年7月にエミー賞ノミネートまで届きました。同じ舞台で落ちたのが、累計40億再生を超える『Hot Ones』です。YouTubeが賞レースに本格参入したFYCキャンペーンの結果、再生数で5倍以上ある番組が届かなかった場所に、Subway Takesだけが通りました。この結果は、再生数では説明がつきません。理由は「AIに作れないもの」だと考えています。一回性、即応性、場所の制約、予測不能性。ライブ音楽、スポーツの生観戦、2.5次元、ポッドキャスト、没入型ドームのCosm、リアリティショー。AIが正しくてそれっぽいものを無限に作れるようになるほど、この4つを持つコンテンツの相対価値は上がっていきます。複製できない「現物」の価値が上がるのも、同じ構造です。そしてSubway Takesは、場所、道具、ルールという、たった3つの制約でその全部を自動的に生み出す構造になっていました。創設者のカリーム・ラーマは「フォーマットを変えなかった」と語っています。これは頑固さではなく、変える必要がなかったということだと思うんです。▼話したこと ・累計7.5億再生、タイアップ1件約3,000万円、副大統領候補も出演した地下鉄インタビュー番組 ・カマラ・ハリスの回は本人の持論が振るわず、双方合意でお蔵入りになっていた ・YouTubeのFYCキャンペーンで、40億再生のHot Onesは届かずSubway Takesが通った ・「作れること」の価値がゼロに近づく時代に、逆に価値が上がるものは何か ・一回性・即応性・場所の制約・予測不能性という4つの共通項 ・レコード、ポケモンカード、ラブブ。複製できない「現物」も同じ構造で上がる ・場所×道具×ルールの3制約が、AIに作れないコンテンツを自動的に生み出す装置になる▼note記事 エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方 https://note.com/keke_ent/n/neb31b88a895f▼朝日けけ。SNS note:https://note.com/keke_ent X:https://x.com/keke_ent substack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • K-フレグランス(韓国香水ブランド)から学ぶ「世界観の設計図」 15.08.2026 14min
    いい香りだから、売れる。香水って、そういうものだと思うじゃないですか。わたしも、ずっとそう思っていました。でも、いま世界で伸びている韓国の新興香水(K-Fragrance)ブランドは大手ではなく、少量生産で作家性の強い、小さな作り手たちなんです。その顔ぶれを並べてみると、どうもいい匂いだから人気、という話じゃないんですよね。BLACKPINKのJennie(ジェニー)が広告に立つTAMBURINS(タンバリンズ)。"Dirty Rice(蒸したご飯)"という名前の香水を、平気で売るBORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)。後者は2022年にソウルで生まれて、たった2年で60カ国に進出しました。2025年には、あのロレアルが出資しています。彼らの発信やブランドビジネスの設計を追っていくと、あることに気づきます。肝心の、香りそのものの話を、驚くほどしていないんです。本記事では、 「なぜ"香りの良さ"で差別化しないブランドが、香水という土俵で世界を獲れるのか」 という問いを解いていきます。このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。韓国の香水が、香りの話をあまりしない理由端的に言えば、こういうことです。TAMBURINSもBORNTOSTANDOUTも、香りという"中身"を、いちばん最後につくっている。先に作っているのは、 模倣されづらい世界観 のほうなんですよね。わたしはこれを『逆順の設計』と呼んでいます。模倣されやすいものほど、後に回す。 香水でいちばん模倣されづらいものって、匂いだと思うじゃないですか。でも、彼らは世界観を選んだのです。この順番が、わたしたちの常識と、逆さまなんですよね。普通は、中身で勝負するはずだった香水は、嗅覚の商品です。だから中身=香りで勝負する。この考え自体は、間違っていません。実際、韓国ブランドも香りの質には妥協していない。NONFICTION(ノンフィクション)は、名香を数多く手がけた世界的調香師Maurice Roucel(モーリス・ルーセル)を起用しています。中身は、ちゃんと一流なんです。でもね、ここに落とし穴があります。一流の調香師は、お金を払えば、どのブランドでも起用できる。つまり香りは、いちばん模倣されやすい層でもあるんですよね。今日すばらしい香りを作っても、明日には似たものが出てくる。いまは、いい香りを分析して近い処方に寄せる技術も、昔よりずっと安く、速くなりました。だから香りは、追いつかれるのがいちばん早いんです。ここを主戦場にするほど、消耗戦になっていく。香りだけで積み上げたブランドは、砂の上に建っているようなものなんですよね。だから、香りを「最後」に作るひとつ、先に断っておきます。ここで言う「最後」は、品質の手抜きでも、開発の後回しでもありません。香りを"差別化の切り札"として、最後まで前面に立てない。そういう設計上の順序のことです。そのうえで、ここからが構造的に面白いところです。世界で伸びている韓国ブランドを横に並べると、きれいに共通する順序が見えてきます。ひと言で言える思想。物語になる名前。行くこと自体が体験になる店。生活に棲みつく日用品。そして、海外の一流小売と資本による信用。香りは、この一番うしろに置かれている。面白いのは、この順序が「たまたま」ではないことです。どのブランドも、判で押したように同じ順番で積んでいく。つまりこれは、誰かの偶然の成功譚ではなく、なぞれば再現できる設計なんですよね。わかりやすいのが、BORNTOSTANDOUTです。創業者のJun Lim(ジュン・リム)は、もともと投資銀行にいた人でした。お金の集め方をいちばんよく知っている人が、最初の旗艦店には外部の資本を一切入れていません。生涯の貯金と退職金を注ぎ、銀行からは借りられるだけ借り、集めていたアートも全部売って、ソウルの漢南(ハンナム)に建てています。本人いわく、あの店はいまも「実質は銀行のもの」なんだそうです。ロレアルという資本が来たのは、そのずっとあと。世界観が固まってから、お金が来ている。順序が、はっきりしているんです。「思想・名前・店」という武器で、香りを囲うもう少し、具体的に見てみます。外から見れば、彼らはただの香水ブランドです。でも設計図を開くと、そこにあるのは香りの会社ではなく、世界観の会社なんですよね。ひとつ目は、ひと言の思想です。BORNTOSTANDOUTは 「人と違うために生まれた」 という反抗。NONFICTIONは 「日常の静かな物語」という内省 。 TAMBURINSは 「異形の美」。彼らは香りではなく、まず態度やスタンスを決めている。これは香りと違って真似ができません。真似したら、ただの物真似に見えてしまうからです。ふたつ目は、名前です。BORNTOSTANDOUTには"Dirty Rice(蒸したご飯)"という香りがあります。別のブランドVilla Erbatium(ヴィラエルバティウム)は、"Rice Makgeolli(マッコリ)"を本気で香水にした。ELOREA(エロレア)にいたっては、いまはもう使われない古い韓国語から、名前をつけています。日本で言えば、甘酒や味噌を、パリの一等地で香水として売るようなものなんですよね。変だからこそ、忘れられない。香りは、嗅がないと伝わりません。でも名前は、嗅ぐ前に会話を生む。物語を生む。しかもマッコリのような固有名は、海外の人にとって「翻訳できる物語」になります。その土地に昔からあるものを使うことで、そこに培われた時間の価値と物語を、商品に込めることができるのです。名前の良し悪しは、結局この一点なんだと思います。その名前だけで、会話が起きるか。みっつ目は、店です。TAMBURINSの母体は、あのGentle Monster(ジェントルモンスター)を運営するIICOMBINEDという会社。店を「売り場」ではなく「美術館」のように作ることで知られてきた会社です。そのノウハウを、そっくり香りに移植した。だから彼らの店は、商品を買う場所というより、ひとつの作品を見にいく場所になっている。写真を撮りたくなる。 人に話したくなる。 店が、そのまま広告になっているんです。エンタメで言えば、常設展やポップアップで"作品世界を歩ける"ようにする発想に近いと思います。香りという模倣されやすいブランド核を、 思想とネーミングと店という、模倣されにくいレイヤーで、ぐるりと囲っている。これが、彼らの真似されづらい独自の武器なんですよね。時間を稼いで資産を築く武器は、もう一段あります。ただし、ここから外側は、少し役割が変わります。思想・名前・店が"真似そのもの"を遅らせるのに対して、もう一段は、競合が遅れている間に、客の生活習慣やスタイルを固め、ブランドの格を固めていく。稼いだ時間を、資産に変える層なんです。彼らは香水にかぎらず、匂いを扱う商材、つまりフレグランス全般にラインナップを広げています。なかには、香りと一緒にコーヒーを出す併設カフェを持つブランドもある。香水は、年に何度も買うものではありません。でもハンドクリームなら、毎日使う。低い頻度の主役の空白を、高い頻度の日用品が埋めて、ブランドのことを忘れさせない設計です。生活のなかに、静かに棲みついていく。エンタメで言えば、ライセンスやグッズや音楽で日常の接点を増やすのと、狙いは同じなんですよね。そして最後に、信用です。無名の香りに「格」を後づけするために、彼らはHarrods(ハロッズ)やSephora(セフォラ)のような、格式のある一流デパートやセレクトショップの棚を取りにいきます。あの店が置いている、という事実そのものが、第三者のお墨付きになる。ロレアルの出資も、役割は同じです。自分たちで世界観を固めきったあとに、外の信用を借りにいく。ここでも、順序は崩していません。もし逆にしたら、どうなるか。世界観が固まる前に大きな資本や大型の棚が入ると、いろんな都合が混じって、あの尖った思想が少しずつ丸くなっていくんです。 だから彼らは、順番を守るために、我慢していると読めるんですよね。「順番」にこだわる理由正直に言うと、この順序の話は、わたしにとって他人事ではないんです。エンタメ事業を統括していた頃、数えきれないほどの企画の立ち上げを、そばで見てきました。そのなかで何度も繰り返されたのが、中身の議論から入って、世界観を後回しにする企画でした。予算、キャスト、スペック。数字の詰めだけは、やたらと早い。でも「この企画は、結局のところ何を体現するのか」という、たったひと言が、いちばん最後まで決まらないままだったりする。そうして時間だけが過ぎて、企画はシュリンクして頓挫する。そういう場面を、わたしは何度も見送ってきました。香りを最後に作る韓国ブランドは、これのちょうど逆をやっている。だからこそ、強いなと感じたんです。商品の核だけで戦っているものは、たいてい長くは続きません。その核が模倣されやすいものであれば、なおさらそうです。けれど、武器による囲いを持っているものは、模倣がなかなか追いつかない。韓国のニッチ香水が体現しているのは、逆順の設計。模倣されやすい香りを最後に回し、模倣されにくい世界観を先に積む者だけが、真似の速いビジネスの世界で、自分の色を守り抜ける、ということです。TAMBURINSも、BORNTOSTANDOUTも、NONFICTIONも、このルールをまもっているんですよね。まだ若いブランドたちですが、その型は、もうはっきり見えています。それでは。朝日けけ。このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由 14.08.2026 18min
    今回は、ワーナーの5年間の実験、劇場版の「格」、そして入場者特典・応援上映・長い劇場期間で日本の劇場が積み上げた「待てないもの」の設計を整理しました。TOHOシネマズの料金改定が示す「場所の値段」への転換までを、数字とともに読み解いていきます。▼話したこと・2021年ワーナー「Project Popcorn」の代償——ノーランは『オッペンハイマー』をUniversalへ持ち込み去った・本丸は赤字ではなく観客の学習——「6週間待てば家で観られる」は5年経っても消えない・StatSignificantの分析:配信専用作品は公開週1位でも翌週には会話から消える・劇場版が付くと格が上がる理由——予算・宣伝・社内の扱いと最初の口コミの語り部・日本の劇場が売るのは「待っても手に入らないもの」——コナンの日付入りイラストや応援上映・『鬼滅の刃』無限列車編は配信まで約1,720日、アメリカの45日の約38倍という防波堤・TOHOシネマズ7月改定で全国一律が終焉——「待てない」は設計でつくり輸出もできる▼note記事アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由https://note.com/keke_ent/n/n5f2a2b4c6dd6▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値。 14.08.2026 19min
    「ジャンプがもう漫画雑誌には見えないんです。」単行本全2巻で完結した『タコピーの原罪』が、連載終了から3年近く経ってアニメになりました。一方で『とんかつDJアゲ太郎』は連載開始から約1年7ヶ月、『僕のヒーローアカデミア』や『ラーメン赤猫』は約1年9ヶ月でアニメ化。完結した小さな作品が何年も経って拾われ、走り出した作品はあっという間に空へ上がっていく。この落差は、いったい何なのか。「アニメ化がいつ、連載何話・単行本何巻で、どういう閾値で決まるのか」を測ったものが見つからなかった。だから朝日けけは、週刊少年ジャンプ本誌と少年ジャンプ+、この10年で連載された214作品を、連載開始日・単行本発売日・アニメ化の発表時期と放送時期まで、ひとつずつ数えました。そうしたら、ジャンプという場所が「漫画雑誌」には見えなくなってきた。閾値とは、これより小さいと反応しないが、これを超えると反応する、その境目のこと。ジャンプは当たってから動くのではなく、当たりそうな瞬間にもう動いている。鬼滅の刃はアニメ化発表時に単行本11巻、呪術廻戦は7巻、ヒロアカは5巻。どれも物語が完結するずっと手前での決定でした。今回は214作の実測データから、アニメ化のタイミングと「5巻」という閾値、本誌26%とジャンプ+83%というアニメ化率の意味、そしてジャンプが「一体型のIP発射台」であることを、ロケットのメタファーで言語化しました。▼話したこと・連載開始からアニメ放送までの中央値は約3年半、最速はとんかつDJの約1年7ヶ月、最長は忘却バッテリーの約6年・アニメ化は完結後ではなく、鬼滅11巻・呪術7巻・ヒロアカ5巻という序盤〜中盤の発表——現場では半年〜1年前から水面下で動いている・本誌新連載のアニメ化率は約26%、2016年組は36%、2019年は9%——多くの年で7〜8割はアニメにならず終わる・アニメ化率26%は選別がゆるいのではなく厳しいから——週刊連載・読者アンケート・打ち切りは超高速オーディション・『5巻前後まで上昇できるか』が閾値——ロケットの第1段切り離しに成功した機体は8割超が軌道に乗る・ジャンプ+主要作のアニメ化率は約83%——デジタルの強みは率ではなく、当たりを見抜く早さと正確さ・タコピーの原罪に象徴される発見力と、連載→打ち切り→アニメ→Netflix/Crunchyrollへ続く一体型IP発射台としてのジャンプ▼note記事ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値https://note.com/keke_ent/n/nd0932652b585▼朝日けけ。SNSnote:https://note.com/keke_entX:https://x.com/keke_entsubstack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe
  • TikTokでバズって売れた音楽アーティストは、全員当たるまでやめなかった人。 10.08.2026 18min
    TikTokの話になると、だいたいこの筋書きで語られます。無名の子がスマホ1台で弾き語りを上げたら火がついて、事務所から連絡が来て、気づいたら紅白に出ていた、みたいなサクセスストーリー。わたしもそう思っていました。でも前回の記事を書いていて気づいたんですが、どうもそう簡単じゃないらしいと。だから、この3年で名前が広まった8組のアーティストは、火がつく前に何をしていたのか。それを1組ずつ調べたんです。デビュー日、最初の投稿日、それ以前の所属、過去に出した曲。結果、素人は一人もいませんでした。いちばん短い人でも、火がつくまでに1年半の助走がありました。長い人は10年です。しかも何人かは、バズる前にすでにメジャーデビューまで済ませてる。先に書いておくと、仕込みだったという話ではありません。8組とも、火がついた瞬間は本人にも事務所にもタイミングは読めていません。ただ、火がついたときに立っていた場所が、全員素人ではなかったという話です。このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。imaseはバズる8ヶ月前にデビュー「NIGHT DANCER」がTikTokで広がったのは2022年の夏です。そして翌2023年2月には、韓国のMelonでJ-POPとして初めて総合チャートのTOP100に入りました。のちに最高17位まで上がっています。日本の曲が海外で聴かれる流れを、いちばん象徴的に作った1曲だと思っています。このとき、imaseさんはすでにメジャーデビューしていました。デビュー曲「Have a nice day」の配信リリースは2021年12月19日です。「NIGHT DANCER」がリリースされたのは2022年8月19日なので、ちょうど8ヶ月前になります。つまり「バズって事務所に入った」ではなく、「メジャーデビューして8ヶ月後に当たった」なんですよね。順番が、違います。ここでいうメジャーデビューは、配信シングル1曲です。さらにさかのぼると、ギターを手にしたのが2020年11月ごろ、DTMを始めたのが2021年1月ごろ。TikTokに初めてオリジナル曲を投稿したのは2021年5月です。そのときのキャプションが、「音楽経験0の素人がオリジナル曲作ってみた(dtm歴4ヶ月)」でした。このキャプションが、たぶん誤解の始まりです。本人は事実を書いているだけなんですけど、これを見た人は「素人が一発で当てた」と受け取ります。実際には、初投稿から「NIGHT DANCER」のリリースまで1年3ヶ月あります。ギターを手にした2020年11月から数えると、TikTokで「NIGHT DANCER」が広まるまで1年6ヶ月です。この記事では、後者を助走と呼びます。AKASAKIは、4本目で当たっているAKASAKIさんも同じ構造でした。ギターを始めたのが2022年、16歳のとき。TikTokに初投稿したのが2023年9月で、「曲名ください」というキャプションをつけたオリジナルの弾き語りでした。そこからシングルを出していきます。2024年4月に1stの「弾きこもり」、7月に2ndの「波まかせ」、同じ7月に3rdの「夏実」。この「夏実」が先に少し伸びました。そして同じ7月に、4曲目となる「Bunny Girl」のサビをTikTokに投稿しています。曲としてのリリースは、3ヶ月後の10月2日でした。当たったのは、4曲目でした。「Bunny Girl」のリリースは2024年10月2日、ストリーミング累計1億回突破の発表が2025年2月5日です。Billboard JAPANの総合ソング・チャート「Hot 100」には10月9日付で40位で初登場しています。初投稿から数えると、当たるまでに10ヶ月。ギターを始めた日から数えると、2年かかっています。3本目で少し伸びて、4曲目で当たった。そういう順番です。でもわたしが見ているのは弾数のほうで、3曲出せる体制を先につくったから4曲目が撃てた、と読むほうが実務に近い気がするんですよね。曲を出すには録って、ミックスして、配信登録して、ジャケットを作らないといけません。それを4回まわせる状態にあったこと自体が、助走です。同じ形は、友成空さんにもあります。2021年3月31日、高校生活最後の日に5曲入りの音源『18』でデビューしていて、2022年11月にはBiSHの「I」を作詞作曲で提供しています。「鬼ノ宴」のデモをTikTokに投稿したのが2023年11月で、その翌月にはエイベックスのcutting edgeから「改札」を配信。デビューから数えて、2年8ヶ月目の火でした。楽音は6年いま日本と韓国でいちばん再生されている「mosi mosi?」の楽音(ささね)さんも、初めて表に出た人ではありません。2020年からモデルとして活動していて、TikTokでカバー投稿を始めたのが2025年3月。約1年でフォロワーが50万人を超えました。そのうえで、2026年4月22日に初のオリジナル曲を出しています。モデル活動の開始から数えると、6年が経っていました。素人の1曲目ではありません。しかもこの曲は本人の宅録ではなく、向田民子さんという作家がプロデュースしています。向田さんの言葉では「単なる楽曲提供ではなく、楽音というアーティストの楽曲プロデュースをさせていただいた形」だそうです。50万フォロワーという土台と、プロの作家。この2つが揃った状態で撃った1曲目が、初週でTikTok総再生4億回でした。4億!!!!!!tuki.は13歳からたぶん、この8組でいちばん「シンデレラ」に近いのがtuki.さんです。中学3年生の弾き語りが、Billboard JAPANのHot 100で1位まで行ったので。でも、TikTokに弾き語り動画を投稿し始めたのは13歳からでした。約1年半でフォロワーが50万人を超えていて、いちばん伸びた動画は1,860万回再生です。「晩餐歌」を投稿したのは2023年7月で、13歳から数えて2年目です。50万人にいつ届いたかまでは公表されていませんが、少なくとも「晩餐歌」が最初の1本ではありませんでした。オリジナルを出すより先に、聴く人のほうが積み上がっていた人です。1年半以上、弾き語りを上げ続けた人が、その先で自分のオリジナルを出した。そう書くと、ぜんぜんシンデレラの話じゃないんですよね。起点の取り方は人によって違うので、棒の長さそのものを比べる図ではありません。見てほしいのは、どこを起点にしてもゼロから始まっている人が一人もいないことのほうです。ここまで並べてくると、8組に共通しているものが1つあります。全員、火がつく前に何かを1周終えている、ということです。才能はもともと8組とも一流です。そこに新しく加わったのが、その1周ぶんの時間でした。モナキのセカンドチャンスいちばんはっきり出ているのがモナキです。純烈のリーダー・酒井一圭さんがプロデュースした「セカンドチャンスオーディション」から生まれた4人組で、開催は2023年10月。名前のとおり、一度どこかで順番が来なかった人が、もう一度立つ場所をつくるための企画です。メンバーの平均年齢は33歳でした。デビュー曲のサビをTikTokに先行配信したのが2026年2月。メジャーデビューが4月8日。そして6月30日、TikTok上半期トレンド大賞2026で大賞を受賞しています。受賞理由に「デビュー前にして7億回再生を突破」と書かれていました。ここで面白いのが、このバズがメンバーもスタッフも全員想定外だったと本人たちが言っていることなんですよね。狙って当てたわけではない。偶然です。でも、当たったあとが速かった。デビュー当日のイベントに約2,500人を集めて、8月にはZeppを3本押さえています。デビューから4ヶ月です。平均33歳の4人が、なぜ4ヶ月でZeppを3本回せるのか。そこに至るまで、それぞれの場所で長く場数を踏んできた人たちだからだと思います。ステージの立ち方も、カメラの前での間の取り方も、イベントの動かし方も、もう体に入っている。火がついた瞬間に、組み立てるほうが誰も慌てなかった。M!LKの10年3ヶ月同じことが、グループの側にもあります。https://sd-milk.com/M!LKは2014年11月24日に結成されて、「イイじゃん」の先行配信が2025年2月17日。10年3ヶ月です。この間に2023年10月22日には横浜アリーナで1万2,000人の単独公演をやっています。バズる前から、アリーナに立てるグループでした。ME:Iは『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』から生まれた11人組ですが、番組シリーズ最多の1万4千人を勝ち抜いています。応募して選ばれなかった人が1万3千人以上います。この記事の後半で出てくる「順番が来なかった人」は、たとえばこの1万3千人のことです。番組がやっていたのは、要するに助走の圧縮でした。1万4千人ぶんの選抜と、最終回までの数ヶ月ぶんの露出を、まとめて11人に集めています。こうして8組の助走を並べると、いちばん短い部類のimaseさんでも1年6ヶ月ありました。起点はそれぞれ違います。楽器を持った日、最初に投稿した日、デビューした日、オーディションを受けた日。でも、どこを起点に取っても、ゼロから当たった人が一人もいないという結論は動きませんでした。TikTokはダッシュキノコここまでを一言にすると、こうなります。TikTokは、まだ何もしていない才能を見つけているんじゃないんですよね。もうずっとがんばって走っていた人に、どんどんブーストしている。増幅しているんです。昔の音楽業界には、順番待ちの列がありました。デモテープを送って、オーディションを受けて、事務所に入って、対バンを重ねて、動員が増えたらレーベルがついて、やっとシングルが出る。この列は長くて、しかも列に並べる人数自体が限られていました。TikTokが壊したのは、この列の「順番」のほうです。列そのものは消えていません。imaseさんはメジャーデビューという列に並んでいました。AKASAKIさんはシングルを4本出す列に、モナキの4人は33歳まで、同じように並んでいます。列から降りた人はいても、走るのをやめた人は一人もいない。ただ、並んでいる途中でいきなりスピードが超でるようになったんです。だから「TikTokでバズれば人生が変わる」は、半分だけ正しいんですよね。半分です。たしかに間口は開いています。でも、そのダッシュキノコを手にいれるには、そもそも走り続けていないと取れないってことです。停まっている人は、ダッシュできませんから。わたしがこの8組を調べていていちばん納得したのは、当たった瞬間の速さが、全部その人の助走の長さに対応していたことでした。モナキが4ヶ月でZeppを3本押さえられたのも、そうです。M!LKがバズを16万人規模のツアーの発表まで持っていけたのも、tuki.さんが初めての有観客ライブでいきなり武道館に立てたのも、助走、つまりそのダッシュの前に積み上げてきたものが、それぞれ違う形で効いています。ここまでの話は、聴く側から見るとこうなります。いま推している人が「急に出てきた」ように見えても、たぶん急ではありません。あなたが見つけるより前にその人は何年も積み上げ続けていて、たまたまおすすめに届いたのが1本目だっただけです。推しのアカウントを、いちばん古い投稿まで遡ってみてください。だいたい助走が見えます。いまとぜんぜん違う顔をしていることが多いので、そこはけっこう面白いですよ。プロデューサー目線事業として才能を探す立場から見ると、ここは考え方が変わるところだと思っています。これまで「発掘」といえば、まだ誰にも見つかっていない人を先に見つけることでした。それが価値だった。でもいまは、見つける工程をTikTokがやってくれます。しかも、こちらが探すより速くて、母数も比べものになりません。だとすると、次に会いに行くべきなのは「一度うまくいかなかった人」のほうです。すでに技術があって、場数もあって、でも順番が来ないままになっている人。この人たちは、こちらから探しに行かないと出てきません。理由は人それぞれで、続けられない事情があった人も、いまは別の仕事をしている人もいます。少なくとも、TikTokを眺めているだけでは出会えない層です。酒井一圭さんの「セカンドチャンスオーディション」がやったのは、まさにそこでした。あの企画がなければ、平均年齢33歳の4人がTikTokの大賞を取ることはなかったはずです。火は偶然でしたが、火がつく場所に4人を連れてきたのは偶然じゃない。日本のエンタメには、この層がかなり厚く眠っていると思います。アイドルを一度やめた人、バンドを解散した人、養成所を出たあと表に出られなかった人。ここに、もう一度撃つ機会と、撃つための曲と、当たったときに受け止める場所を用意できるかどうか。ここから先の10年は、そこで差がつくんじゃないかなと見ています。それでは。朝日けけ。このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 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